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室内楽とは?オーケストラと何が違う?

文化・芸術についてのちょっとした疑問や気になることを取り上げていく「Bunka Essay」。今回は、室内楽の歴史に迫りながら、意外と知らないその定義と楽しみ方について紹介します。


意外と知らない室内楽の定義

クラシック音楽には、演奏スタイルによって様々なジャンルが存在します。代表的なところでは、オーケストラによって演奏される多楽章からなる楽曲「交響曲」や、オーケストラの音楽に乗って歌手や合唱が演技をしながら歌い物語が進む「オペラ(歌劇)」、そして今回のテーマとなる「室内楽」もあります。
一度は聞いたことがある“室内楽”という言葉、分かっているようでいて、いざ聞かれると戸惑いませんか?

室内楽=室内で演奏される音楽?

クラシック音楽は15~16世紀のルネサンス期、そして17~18世紀のバロック時代にかけて、大きく分けて次のように3つのジャンルが形成されていきました。
①教会音楽…教会で演奏されるキリスト教の礼拝音楽(賛美歌など)
②劇場音楽…劇場で演奏されるオペラや歌劇
③室内楽…王侯貴族の屋敷や宮廷の一室で演奏された音楽(器楽合奏や声楽)
当時の音楽家の多くは教会か宮廷に雇用され、教会の典礼や宮廷の行事など特定の目的や依頼に応える形で作られる曲がほとんどでした。そのうち、宮殿の広間や貴族の屋敷の客間、つまり部屋で演奏された音楽全般が室内楽と呼ばれ、管弦楽や声楽などもその中に含まれていました。
その後、18世紀後半から19世紀初頭にかけての古典派の時代になると、ベートーヴェンのように教会や宮廷に属さず大衆向けの演奏を主体とする音楽家が現れ、また数十人規模のオーケストラによる交響曲や管弦楽曲も増えていきました。それらと区別する形で、2人以上から多くても10人程度の器楽奏者が集まり、各パートに1人の独奏者を配する小規模な器楽合奏が「室内楽」と定義されるようになったのです。奏者の数によって二重奏から十重奏に区分され、楽器の組み合せごとに様々な形態に分かれます。中でもポピュラーなスタイルは、ヴァイオリン2本とヴィオラとチェロ1本ずつによって構成される弦楽四重奏や、ピアノ・ヴァイオリン・チェロによる編成のピアノ三重奏です。

1755年頃に描かれた絵画から当時の室内楽の様子がうかがえる。 Paul Joseph Delcloche《Concert at the Court of the Prince-Bishop of Liège》(部分)1753-1755年 バイエルン国立博物館所蔵

シンプルな編成だからこそ際立つ楽器の個性とハーモニー

このように小規模な編成が室内楽の大きな特徴といえますが、それは室内楽の魅力そのものでもあります。オーケストラのように1つのパートを複数人数で演奏せず、ハーモニーが複雑な交響曲よりも楽曲の構造がシンプルなので、楽器それぞれの音色や一人ひとりの奏でる美しい旋律をより細かく聴き分けて楽しめるのです。
例えば弦楽四重奏は、第1ヴァイオリンがメロディを担当して曲をリードし、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが伴奏を務めます。その中でも、第1ヴァイオリンと高い音域のハーモニーを奏でる第2ヴァイオリン、中低音域でリズムを刻むヴィオラ、低音域で深い音色を響かせるチェロ、と楽器の特性に合った音域を重ね合わせて楽曲の深みが醸し出されます。 また、ピアノと独奏楽器1本による二重奏(楽器名によって〇〇ソナタと呼ばれます)の場合、伴奏を務めるピアノが一見すると脇役のようですが、時には伴奏だけでなくメロディを担当したり独奏楽器と掛け合いを繰り広げることもあります。このように、楽器同士の関係性に注目して聴くと、室内楽の奥深い面白さがより感じられることでしょう。
9/1(金)~3(日)にかけて、日本を代表するチェリストの宮田大とNHK交響楽団ヴァイオリン奏者の横溝耕一が豪華奏者を集めてお届けする『宮田大&横溝耕一が贈る室内楽フェスティバル AGIO』が浜離宮朝日ホールで開催されます。シンプルな編成だからこそ各楽器の魅力や演奏者の個性が楽しみやすい室内楽の温かな調べに、じっくり耳を傾けてはいかがでしょうか。


室内楽では楽器同士の掛け合いも聴きどころ。奏者と客席の距離が近いので、より間近に音色を感じられるのも室内楽の魅力の一つ。

文:上村真徹

〈公演情報〉※終了しました
Bunkamuraオーチャードホール×浜離宮朝日ホール 共同企画
ORCHARD PRODUCE 2023
宮田大&横溝耕一が贈る室内楽フェスティバル AGIO
公演日:2023/9/1(金)~3(日)
会場:浜離宮朝日ホール

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