見出し画像

『鈴木康広展 ただ今、発見しています。』会場の様子を一部公開!開幕レポート

 2024年7月20日(土)、梅雨明けと同時にオープンした『鈴木康広展 ただ今、発見しています。』。身の回りの何気ない出来事や小さな気づきを、ユーモラスな作品にしてきたアーティスト鈴木康広さんの、東京では初めてとなる個展です。二子玉川ライズ スタジオ & ホールで開催中の展覧会の様子を、いち早くレポートします。

 二子玉川駅直結の、おしゃれなショップやカフェ&レストランが建ち並ぶ二子玉川ライズ。この施設のメインストリートを、駅を背にどんどん歩いて行き、中央広場を越したところに建っているのが二子玉川ライズ スタジオ & ホールです。ガラス張りの会場に入っていくと、そこに広がっているのが、鈴木康広ワールド。中央にはヘリウムガスで膨らんだ巨大な《空気の人》が横たわり、その周りには、鈴木さんの「見立て」(あるものを見て他の何かを連想し、新たな視点で捉えなおすこと)から生まれた、楽しい作品がところ狭しと並んでいます。

この「見立て」のわかりやすい例が、《りんごの天体観測》という作品。りんごの赤い皮の表面に浮き出た斑点が、さまざまな星座に見えたことから、そこに穴を開けて中から光をあて、りんごのプラネタリウムを作っています。

また《まばたきの葉》は、人間の目がプリントされた葉っぱの形の白い紙が、中央の白い筒から吹き出してくるという鈴木さんの代表作。

舞い落ちる紙は、まるで葉っぱがまばたきをしているよう!これは鈴木さんが渋谷駅のホームで電車を待っていた時に、前に並んでいた人のポケットから切符がくるくると回転しながら落ちたことがヒントになっているのだとか。

鈴木さんの作品は、そんな日々の生活を送っていくなかで、気づいたことや発見したこと、子供の時から気になっていたことなどを何年も大事に考え続け、形にしたものが多くあります。

その中には「飛行機の窓から海を見ていたら船がファスナーに見えた」という「見間違い」から、実際に本当の海をファスナー型の船で航行してしまったようなスケールの大きな作品や、通常は重さを量るための道具なのに、あえて空気の軽さを量っている《軽さを測る天秤》(天秤が空気の変動で動くまで数十分。気長に待つと奇跡の一瞬に立ち会えるかも?)まで、「えっ! この作品、そんな何気ない発想から生まれたの?」と思わされるものばかり。これら作品にまつわるエピソードは、各作品近くの床に貼られた足跡の上に、鈴木さんの自筆で書かれていますので、ぜひ参考にしてください。

 それから体験型の作品も展示されています。ひとつが「目を閉じた瞬間のあなたの存在を証明してくれる」《まばたき証明写真》。通常、証明写真はまばたきNGですが、この機械はあなたがまばたきをした瞬間、つまりあなたが世界を見ていなかったその一瞬を感知して、撮影してくれます。出てきたカードには目をつぶった自分の、今まで見たこともない衝撃の表情が!これも新たな自分の「発見」になるのかもしれません。

 もうひとつ《小さな発見機》は、新幹線などのチケットを買う時、「ただ今、発券しています」と発券機から聞こえた「発券」という言葉を「発見」と間き違えたことから生まれた、本展を象徴するような作品。こちらは、本展のために制作された注目の新作です。コインを入れると、鈴木さんの声で「ただ今、発見しています」というアナウンスが流れ、鈴木さんがこれまで発見してきた100種類を越えるさまざまなアートの種のスケッチが、“発見”した日付と時刻と共に、電車の特急券さながらの仕様ででてきます。

上記2作品はどちらも有料で体験できる作品ですが、これは世界にひとつだけの一生もののアートなお土産。ぜひ展覧会に行かれる方はトライしてみてください。

 また本展では、作品に詳しい専門のスタッフが、作品鑑賞のサポートをしてくれます。見ただけではよくわからない作品も、お話を聞くと、とても深くて、さまざまな気付きを与えてくれるものばかり。スタッフに気軽に声をかけて、これがどんな作品か聞いてみましょう。会話の中から新たな「発見」があるかもしれません。そして何か少しでも「発見」したら、ぜひ足跡の形をしている紙に書いて会場に設置されたボックスに投函してください。あなたの「発見」は鈴木さんの今後の「発見」に大きな影響をもたらし、新たな作品につながるかもしれません。

取材・文/木谷節子


〈展覧会情報〉
鈴木康広展 ただ今、発見しています。
開催期間:2024/7/20(土)~9/1(日)
会場:二子玉川ライズ スタジオ & ホール


鈴木康広さんがアーティストになったきっかけや代表作創作時のエピソードなどインタビューに答えていただいています。こちらも合わせてお読みください!