普段入ることのできない場所にも潜入!館内ツアー「Bunkamuraクルーズ」レポート
渋谷の魅力をまち一体となって発信するため、新たな公共的な施設の整備や大規模建築物のオープンといった節目に合わせて2018年から実施しているイベント「まちびらき」。そのⅢ期目となる「SHIBUYAまちびらき2024-あたらしい景色をソウゾウしよう-」では、普段入ることのできない渋谷の場所に入ったり特別な体験ができる「OPEN CITY体験」が行われ、Bunkamuraも1日限りの特別プログラムとして館内ツアー「Bunkamuraクルーズ」を開催しました。今回はその模様をレポートします。
*「Bunkamuraクルーズ」は、台風7号の接近に伴い当初予定日での開催が中止となり、日程を改め開催いたしました。
館内の至る所にデザインされている「船のイマージュ」
オーチャードホールを除いて休館中の館内をめぐるツアー「Bunkamuraクルーズ」を開催したのは、Bunkamuraがちょうど開館35年を迎えた2024年9月3日。外が暗くなり始めた午後6時半、約20名のツアー参加者は1階正面入口ロビーに集まり、船員姿のツアーガイドから「Bunkamuraは、フランス人建築家ジャン=ミシェル・ヴィルモットが『トレンドに流されないシンプルさ』『Dignity(威厳、尊厳、品格)』『船のイマージュ』をコンセプトに設計しました。本日はぜひこれらに注目しながらご見学ください」と“船旅”のポイント説明を受けました。
ツアーはまず入口前の正面外観からスタート。何度も足を運んで見慣れた外観ですが、ガイドから「建物正面が船のマストのように見えませんか」と尋ねられ、実は船をモチーフにデザインされていることに初めて気づきました。つまり、入館する瞬間から文化芸術の世界への船旅が始まっていたのです。ほかにも、入口へ続く天井が波のような曲線状になっていたり、“音を織りなす”というテーマで3色のタイルが織物のように外壁を装飾していたり、シンプルでありながら素材とその組み合わせにこだわるヴィルモットの美学に唸ってしまいます。ちなみに、このように船や海を感じさせる「船のイマージュ」は、館内の至る所にデザインされているそうです。
続いて向かったのは正面入口。「天井部分をご注目ください」とガイドの案内を受けてよく見ると、グリーンの間接照明によって天井がシンメトリーに区切られていました。シンメトリーは前述の「Dignity」を体現すると同時にヴィルモットが好んだデザインで、全体を均一に照らすのではなく光のメリハリをつける間接照明もフランスの空間デザインの特徴なのだとか。また、Bunkamura内の間接照明は光源が直接目に入らないようになっていて、柔らかい印象を与えるよう配慮されているそうです。Bunkamuraを訪れた際に感じる心地よい落ち着きは、そうしたところにも秘密があったんですね。なお、入口からインフォメーションセンターまで続く床にも、シンメトリーを表す長い線がデザインされていました。
シアターコクーンとオーチャードホールでは舞台の上にも特別に案内
そしていよいよ休館中の館内に潜入! まず訪れたのは、休業中のカフェレストラン「ドゥ マゴ パリ」です。フロアデザインのポイントとしてガイドが第一に挙げたのは「クルーズ船のような心地よい開放感を意識した」という1階と地下の吹き抜け構造。そう聞いてから空っぽ状態のフロアをよく見ると、手すりがクルーズ船のデッキのようにデザインされていたり、バーカウンターなどに間接照明が柔らかく浮かび上がっていることに気づきました。営業中はなかなか店内をじっくり見る機会がありませんでしたが、居心地の良い空間を演出するこだわりが細かく施されていたんですね。
続いて向かった先は、同じく休館中のシアターコクーン。ガイドの説明によると「Bunkamuraのシンボルマークにはオーチャードホールが赤の■、シアターコクーンが緑の●、ザ・ミュージアムが黄の▼、ル・シネマが青の◆で表現されていて、各施設にもそれらがモチーフとしてデザインされている」のだとか。それを聞いてからロビーを見渡すと、カーペットや壁時計にデザインされた緑の●模様や、緑色に灯されている間接照明を発見しました。さらに無人の客席へと足を進め、普段は立ち入ることのできない舞台の上へ特別に案内! 舞台から見渡す館内の光景はとても新鮮で、客席との距離の近さも改めて実感できます。そんな貴重な体験に参加者の皆さんは興奮を隠しきれない様子でした。
そして最後に訪れたのがオーチャードホール。館内の至る所にデザインされているという「船のイマージュ」を、ここでもホワイエの手すりや吹き抜け空間に発見できました。「船のイマージュ」は他の施設でも見られますが、白い大理石が配された明るくリッチなこの空間はさしずめ豪華客船! さらに参加者の皆さんはオーチャードホールでも舞台の上へ。ホールのスタッフが舞台機構の構造や機能について細かく解説し、電動の可動式音響シェルターや天井の照明ブリッジが実際に動く様子も披露すると、皆さん「おお」と声を漏らしながら目を輝かせていました。最後にこれまで訪れた施設に関する質問タイムが設けられ、約1時間にわたる館内ツアーは終了。ロビーで記念撮影を行い、解散となりました。
今まで当たり前のように見ていたBunkamuraの建物の随所に潜む演出を、さまざまな豆知識トークを聞きながら実際に見学できたことで、これからの来館がさらに特別で楽しいものになりそうです。今回のツアーの反響によってはまた新たな特別プログラムが開催されるかもしれないそうなので、今後が楽しみですね!
文:上村真徹
〈イベント情報〉
SHIBUYAまちびらき2024-あたらしい景色をソウゾウしよう- 「OPEN CITY体験」
館内ツアー「Bunkamuraクルーズ」
2024/9/3(火)
Bunkamura館内(オーチャードホール他)