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特別ワークショップレポート 第四弾 六本木康弘先生

 9月23日に、ゲスト講師としてアクションディレクターのみならず俳優としても活躍する六本木康弘さんとアシスタントの坂本和基さんにお越しいただき、殺陣のワークショップを開催しました。
 殺陣と聞くといわゆるチャンバラを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、刀や銃など、扱う武器の種類は様々。さらには武器を持たない素手の殺陣も存在します。今回のワークショップは3時間という短い時間のため、刀を使った時代殺陣と、素手の現代殺陣にフォーカスして実施しました。

 最初は時代殺陣から。木刀の握り方から丁寧に説明され、姿勢や足の運び方、そして素振りと段階を踏んで学んでいきます。具体的かつポイントを押さえた指導で、受講生の大半は未経験でしたが、ものの10分で立ち姿が様になっていました。しかし木刀を振るのは難しい様子。講師たちの乱れの無い剣筋は、滑らかな一本の線のように見えるだけでなく、振った際に空気の斬れる“音”がはっきりと聞こえていました。

 一通りの振り方を学んだあとは、しん(主役)とからみ(脇役)に分かれて殺陣のワンシーンを作りました。芯は絡に囲まれ、どこから襲われるかわからない緊張感あふれるシチュエーション。講師の合図で絡は一人ずつ斬りかかり、芯は気迫で彼らを退かせます。プロの役者を目指している受講生たち。役を与えられたことで、さらに生き生きと演じていました。

 続いて、後半の素手の現代殺陣に移ります。当然のことながら、殺陣は実際に相手にパンチやキックを当てるのではなく、当たっているように見せる“お芝居“です。しかし、エンターテイメントとして最大限カッコよく魅せるために、「本当ならどうするか」を知っていることが肝なのかもしれないと思いました。

 私もおそらく皆さんと同じく、日常生活で殴り合いを経験することなどなく、相手に強い攻撃を与えるのには手足を勢いよく出せばよい、という程度のイメージしか持っていませんでしたが、拳をどのように握り、手足のどの部分を相手の体のどこにヒットさせると効果的か、という説明には膝を打ちました。

 殺陣は生きるか死ぬかの世界を描くため、時には事故につながることもあります。安全面を担保するため、コミュニケーションの大切さを六本木さんが語る場面もありました。事前の打ち合わせはもちろん、実際に動いている中で相手に合図を送り、それを受け取ることで安全な距離を保ち事故やケガを防げるそうです。
 目の前の舞台に全力で取り組むことは大切ですが、「先々も舞台に立つことを忘れないでほしい。」という講師の言葉を胸に、これからも受講生には殺陣に挑んでほしいです。

 ワークショップを終えて六本木さんに感想を聞くと「役者を目指している方たちなので呑み込みが早い。すぐに応えて動いてくれるので、やっていてこちらもテンションが上がりました。許されるならもっとやりたかったです。」と、なんとも嬉しいお言葉。「昔の共演者と時を経て再び会えることの嬉しさはひとしおです。その時に成長した姿を見せられるように、吸収していく努力とやり続けていくことが大事。そのためにもまずは、諦めないでほしいです。」と締めくくりました。

 今回の特別ワークショップでは初めて、CAS受講生以外の一般の方が体験できるクラスも用意しました。どちらのクラスも濃密な時間となりましたので、また多くの方に殺陣の世界を味わっていただける機会を作りたいです。

(制作・F)

次回のCAS通信もお楽しみに!

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