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常識に縛られない独創性に心を奪われる!境界のないアートの魅力とは?

近年は企業活動から社会生活までさまざまな場面において、国籍・性別・年齢・障害の有無を問わず誰もが活躍できる「ダイバーシティ(多様性)」の実現が推進されています。Bunkamuraでも2023年から国際障害者交流センター ビッグ・アイの連携と協力のもとで「BiG-i×Bunkamura アートプロジェクト」を実施し、障害のあるアーティストによる作品を対象に作品募集を行っています。今年も国内外1400点もの応募作が集まり、その中から選出した受賞・入選作品を8月30日からBunkamura Gallery 8/で展示します。今回は、こうした作品が持つアートとしての魅力や可能性について掘り下げてみましょう。


欧米で誕生した概念が日本にも波及

1945年にフランス人画家ジャン・デュビュッフェが提唱した「アール・ブリュット」。これは、精神障害のある人など美術の専門教育を受けていない人々の作品を指し、英語圏ではそれよりも広義な「アウトサイダー・アート」という呼称で定着しました。そして1992年にアウトサイダー・アートの大規模な展覧会『パラレル・ヴィジョン展』がロサンゼルスのカウンティ美術館で初めて開催され、それまで芸術活動の枠組みで取り上げられなかった人々による表現がアートとして扱われるようになっていったのです。
障害者による文化芸術活動はセラピーなど福祉の一部とみなされ、純粋にアートとして評価されづらい状況が長らく続いていました。そんな中、1993年に『パラレル・ヴィジョン展』の日本巡回をきっかけに認知が高まり、1995年には障害のある人たちの芸術活動を推進する「エイブル・アート(可能性の芸術)」という運動がスタート。近年は障害のある人たちによる作品を対象とした公募展や企画展も増え、さらに国際障害者交流センター ビッグ・アイによる公募展を2012年からBunkamura Galleryで開催するなど、福祉とアートの境界線を取り払おうとする試みも見られます。

「BiG-i×Bunkamura アートプロジェクト」の二次審査(現物審査)の様子。一次審査を通過した数百点もの作品を会場の床一面に並べ、審査員たちが1点ずつ吟味します。寄って見たり、持ち上げて見たり、あるいは角度を変えて見るなど、作品の隅々までじっくり目を走らせるので、審査が終わるまで丸1日かかるそうです。最終的には各審査員が12点ずつ選び、入賞作品を決定します。

作り手一人ひとりの特性から生まれる「表現の多様性」

障害のある人たちによるアート作品は、不自由な身体による独特のタッチ(絵筆の流れや筆圧など)、あるいは“何か”への圧倒的な執着(同じ模様を緻密に繰り返して描くなど)といった、作り手一人ひとりの特性と結びついた独創性が特徴として挙げられます。また、「赤色はこういうニュアンスを表すもの」といった表現の常識に縛られない作品も多く見られ、その独創性は「BiG-i×Bunkamura アートプロジェクト」の審査員を務めた秋元雄史氏が「こちらの読解能力を試されている」と舌を巻くほどで、一人として同じような作品はないほど多様性に満ちています。つまり、現代アートのセオリーにとらわれない大胆な表現とその意図を探る面白さがあると言えます。
また、健常者よりも動作に途方もない労力を要する障害のある人たちのアート表現は、一筆たりとも無駄にしないよう全精力が込められていて、まさに“一筆入魂”。その力強いタッチで訴えかける表現は、理屈抜きに「すごい」「美しい」と鑑賞者の心を揺さぶります。言語によるコミュニケーションが不自由な人たちが「自らの内面を表現したい」という強い欲求から創造するアートは、言葉に頼らなくても表現者の世界観を表すことができるというアートの特長を、無限に切り開く可能性を秘めていると言えるでしょう。

障害のある人たちのアート表現は、筆の走らせ方や色づかいが大胆で、アートの既成概念にとらわれていないのが特徴であり魅力の一つです。写真右は「BiG-i×Bunkamura アートプロジェクト」秋元雄史賞を受賞した☆ acco・Lemuria ☆さん作《清らかな心》。

純粋にアート作品として評価されるには?

障害のある人たちによるアート作品を取り巻く現在の環境に目を向けると、福祉とアートの境界線、つまり純粋にアート作品として評価されづらい状況は今も根強く残っているかもしれません。しかし、「BiG-i×Bunkamura アートプロジェクト」入賞作など実際に作品を鑑賞すれば、「障害のある人の作品です」とわざわざ言わなくても、アートとしての見ごたえや社会に認知されるポテンシャルを秘めていることがよく分かるのではないでしょうか。
秋元氏は「作品を見て『この作家、どんな人だろう』と属性を調べたら、知的障害や精神疾患があることが分かる。それは作品の後に来る属性の一つになればいいなと思います」と理想的なあり方を語っていますが、このように本来アートはまず作品そのものを鑑賞・評価するもの。多様性の尊重が叫ばれている昨今だからこそ、まずは障害のある人たちが創造した個性あふれるアート作品をフラットな気持ちで鑑賞してはいかがでしょうか? そこで得られた感動を多くの人たちが共有することによって、社会が障害のある人たちを分断せず、その作品を「人間として同じ、表現者によって表現されたもの」として見るようになっていくことでしょう。

文:上村真徹


〈展覧会情報〉

Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル
BiG-i×Bunkamura アートプロジェクト
第1回 受賞・入選作品展
Straight from the Heart ーこころのままにー

開催期間:2024/8/30(金)~9/9(月)
会場:Bunkamura Gallery 8/ (渋谷ヒカリエ8F)

▼BiG-i×Bunkamuraアートプロジェクトの詳細はこちら

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