感動が生まれる場所〜劇場紹介その② セシオン杉並
Bunkamuraの主催企画を開催する劇場やホールをご紹介するレポート。「一度は生で音楽や演劇を鑑賞してみたい」と思っている方が気軽に足を運ぶきっかけになるよう、またすでに何度も足を運んでいる方も「このホールはこうなっていたのか!」と新たな発見を得られるよう、様々な角度から劇場・ホールの特徴に迫ります。 第2回は、2024年2月から始まるBunkamura主催公演『セシオン杉並 Meet The Artists』シリーズの開催会場となるセシオン杉並です。
“出会い”をひろげる杉並区の拠点施設
セシオン杉並は、杉並区立公民館の役割を引き継ぐ形で1989年6月に開館した、杉並区立社会教育センター及び高円寺地域区民センターの複合施設の愛称です(セシオンはスペイン語で「出会い」の意味)。人々がともに学び、交流する場の拠点として位置づけられており、館内には展示室・集会室・音楽室・体育室・料理室などが設けられ、幅広い用途に利用されています。ホールは491席(最大定員503名)で、杉並公会堂、杉並芸術会館(座・高円寺)と並ぶ、区の文化教育活動拠点のひとつです。
同館では大規模改修工事をきっかけに、民間のノウハウによる効率的な運用やサービス向上を目指して2023年度から指定管理者制度が導入されました。東急グループで文化事業を担い多様な公演を開催してきたBunkamuraが、その実績を買われて東急コミュニティー・協和産業と共に指定管理者を務めることになり、年約3回の『セシオン杉並 Meet The Artists』を通じて杉並区の文化芸術の発展への寄与を目指しています。
プロも認める音の響き!多彩な公演に対応できるよう舞台機構も充実
セシオン杉並のホールは優れた残響に定評があり、ピアノ教室など文化芸術の発表会で頻繁に利用されるだけでなく、近隣に事務所を構えるオーケストラが練習拠点として使用しているほど! その秘訣は、自由に調整できる「残響可変装置」にあります。普段のホールの壁はマイクの使用に適した吸音素材になっていますが、この壁をボタン1つで反転させると、音が反響する仕様へと一変。クラシックの演奏会で理想とされる長さまで生音の残響が伸び、豊かな響きを聴かせることができるのです。
ホールの客席の壁はボタン操作1つで反転し、館内の音を吸収する素材から、音が反響する仕様へと転換させることができます。また、ステージ上の反響板も可動式で完全に収納することが可能。こうした設備によって、演奏会や講演会など多様な用途に使い分けられるようになっています。
舞台機構としてステージ上にも反響板が設置されていますが、演奏会以外の幅広い用途に対応できるよう、可動式になっています。また、客席の前4列を格納すれば、オーケストラピットに早変わり。さらに能舞台の大道具も常備していて、ステージ上に仮設の能舞台を設営することが可能。仮設とは思えないほど本格的なもので、これまで公演を行った狂言師や能楽師も「立派だ」と感心したそうです。
全面リニューアルで誰もが快適に利用できるホールに!
セシオン杉並は2021年から約1年半かけて施設全体が全面的に改修され、ホールも大幅に進化! 客席はコンクリートの土台から作り直し、どの席からでもステージが見えやすいよう傾斜を設け、座席数を若干減らすことで椅子の幅を広げるなど、より快適に公演を鑑賞できるようになりました。客席前方には6台分の車椅子スペースをゆったりと設け、お子様連れのお客様が利用できる客席最後部の親子室(お子様がぐずってしまった時にでもご覧いただける防音室)も心地よい空間にリニューアル。また、座席カバーの色も“ハレの場”にふさわしい華やかな赤に変更し、リニューアル前のホールを知る方から「すごく変わったね」と好評の声が多く寄せられました。
リニューアルでもう1つ大きく生まれ変わったのが、映画の上映会や講演会・セミナーなどに利用されるプロジェクターです。光源の明るさを示すルーメンは家庭用だと2000ルーメン程度ですが、セシオン杉並の最新型プロジェクターはなんと2万ルーメン! 客席の照明がついたままでもスクリーンに鮮明かつ明るい画像・映像を投影できるスグレモノです。
また、施設の改修に伴って中庭エリアの段差がなくなり、キッチンカーが出店するようなイベントやマルシェを開催することも可能に。館内施設での催しと連動したイベントも行われていて、セシオン杉並を発信地とする地域の賑わいを今まで以上に生み出しています。
Bunkamura主催公演『セシオン杉並 Meet The Artists』シリーズが目指すものは?
セシオン杉並ではBunkamura主催公演として2024年から『セシオン杉並 Meet The Artists』シリーズがスタート。“本物のアーティストと出会える原体験を提供”をテーマに、小さなお子様や入門者でも文化芸術に親しめるよう、公演に関するワークショップや劇場ツアーを公演本番前に実施します。
まず2月18日(日)に第1弾として『千住真理子 トーク&コンサート』を開催。千住真理子によるヴァイオリンの演奏のほか、普段見ることのできない劇場の仕組みをご案内する劇場ツアーを実施します。続く第2弾として3月24日(日)には『野村萬斎・野村裕基 狂言の世界』を開催。万作の会の若手狂言師によるワークショップを公演本番前に実施し、能楽師による指導で狂言の動きを体験できます。
こうした新シリーズの意義や目標について、セシオン杉並の運営スタッフは次のように語ってくれました。
「セシオン杉並にはこんなにも立派なホールがあるのに、実は意外と知られていないようなんです。それではあまりにもったいないので、まずはホールの良さを伝えることを目的に、スタインウェイのピアノを用いたクラシックの公演や、本格的な能舞台を用いた能狂言の公演を実施します。今後もこうした“開かれた体験型の公演”をシリーズとして育て上げ、多くの方たちに定期的に足を運んでいただくことで、このエリアに活気をもたらしたいと思います」
Bunkamuraのノウハウとセシオン杉並のホールの特長を活用した、今後のラインナップにご期待ください!
文:上村真徹
〈公演情報〉
セシオン杉並 オープニングシリーズセシオン杉並 Meet The Artists
会場:セシオン杉並(ホール)
vol.1千住真理子 トーク&コンサート
2024/2/18(日)15:00開演
vol.2野村萬斎・野村裕基 狂言の世界
2024/3/24(日)15:00開演
「Bunkamura Report」では、Bunkamuraで開催したイベントのレポートや、主催企画を開催する劇場やホールをご紹介するレポートなどを配信していきます。