オペラ(ビギナーのための鑑賞ガイド①)
コンサートホールや劇場で生のコンサートやお芝居を体験してみたいけど、初心者だと分からないことが多く、何となく敷居の高さを感じてしまう……。そうした不安を払拭して最初の一歩を踏み出すきっかけになるよう、初めて文化芸術を楽しむための入門知識をまとめた企画「Start!Bunka ビギナーのための鑑賞ガイド」がスタート! 第1回はオペラを楽しむコツや鑑賞時の基本的なマナーをご紹介します。
オペラの鑑賞前に予習は必要?
生の歌声とオーケストラの演奏が一体となって劇場を震わせる圧巻の音楽。伝説・神話から小説まで幅広い題材に綴られた人間の普遍的な感情を、心を揺さぶる歌と演技で織りなす演劇。同じ演目でも公演ごとに独自の視点で再解釈する演出。舞台全体を彩る美術や豪華な衣裳、そして照明──。オペラとはこうしたさまざまな要素が一体となり、相互的に力を発揮し合う総合芸術です。そのステージを目の当たりにすれば、必ずや興奮と感動を覚えることでしょう。
このように五感を刺激する魅力に満ちたオペラですが、どの演目にも共通しているのは「台詞のほとんどを歌い、ストーリーが歌で進められる」こと。鑑賞する演目選びのポイントとして、事前にストーリーを調べて内容が分かりやすそうな演目を選ぶと、初めてのオペラ鑑賞でもさまざまな見どころをじっくり堪能しやすくなるのでおすすめです。また、劇中のアリア(主要な役の見せ場の独唱)がドラマ・映画・CMなどに用いられているような演目だと、初めてのオペラでも耳に馴染みがあって楽しみやすいことでしょう。
オペラに似たものとして、ヨハン・シュトラウスⅡ世の『こうもり』やオッフェンバックの『地獄のオルフェ(天国と地獄)』に代表されるオペレッタ(喜歌劇)があります。オペラと比べて歌わない台詞が多く、エンターテイメント的要素が大きいため、まずはオペレッタに触れてからオペラの世界に入っていくのもおすすめです。また、オペラを演奏会形式で上演する公演もあり、比較的お手ごろな価格でオペラの魅力を気軽に体験できます。
なお、オペラ公演のほとんどは外国語ですが、大部分の公演はステージの両脇で台詞やアリアの字幕が表示されます。その場合、字幕を読めばストーリーを把握できるので、必ずしも鑑賞前にストーリーを頭に入れておく必要はありません。とはいえ、なるべく字幕を追わず歌や音楽に集中したいという方は、おおまかなストーリー展開やアリアで歌われる内容を事前に確認しておく“予習”をおすすめします。
オペラ鑑賞での席選びのポイントは?
鑑賞する演目選びの他にも、初めてのオペラ公演で多くの方が迷うのが「どのエリアの席で鑑賞すればいいか」ではないでしょうか。劇場やホールに足を運んだことがないと、それぞれの席の特徴や違いをイメージしづらく、どんな基準で席を選べばいいか分からないですよね。
良い席の定義は、目的によって変わってきます。歌手との距離が近くて表情までよく見え、音の迫力や臨場感を感じられる1階前方。ステージ全体が視野に入り、舞台の美術セット全体も鑑賞しやすい1階後方。舞台全体を俯瞰して見渡すことができ、オーケストラの奏でる音がまとまって豊かに響く2~3階席。斜め方向になりますが、正面席よりも近い距離から舞台を俯瞰できるバルコニー。それぞれの席に特徴があるので、何度か通って自分好みの席を探してみてください。
また、オペラグラスを持参すると、ステージから離れた席でも歌手の細かい表情、衣装、舞台セットをより堪能しやすくなります。市販のオペラグラスは持ち運びやすいよう軽量かつシンプルに設計されているため倍率3倍が一般的ですが、大きめの会場や2~3階席で鑑賞する場合は4~10倍程度の高倍率タイプがおすすめです。なお、公演によっては会場ロビーでオペラグラスを貸し出している場合があるので、購入前に一度試してみてはいかがでしょうか。
オペラ鑑賞のマナーは?どんな服装で行けばいい?
劇であると同時に音楽が重要な要素を占めるオペラ公演において、鑑賞マナーとして最も気を付けることは「上演中に音を立てないこと」です。幕が上がる前に序曲が演奏される時点から公演は始まっているので、会話はもちろん、咳もできるだけ控えましょう。カバンや袋を開けたり、公演のパンフレットをめくる音も、自分が思っている以上に周りのお客様には聴こえてしまうもの。同じ理由から上演中の途中入場ができない場合があるので、開演時間に間に合うよう余裕を持ってお出かけください。
上演中にソリストたちの見せ場であるアリアやアンサンブルに感動したら、曲が終わったタイミングで拍手を贈り、感動の気持ちを歌い手たちに伝えましょう。「そもそもどの曲が見せ場なのか分からない」という方は、周囲の拍手のタイミングに合わせるとよいでしょう。他にも、公演の最初に指揮者が出てきた時や、舞台の緞帳が下りて幕が終わる時も、拍手を贈るタイミングです。また、上演中のマナーとして意外と盲点なのが鑑賞時の姿勢。前のめりに座ると後方のお客様の視界をさえぎることになるので、座席の背もたれに背中を付けた状態で座りましょう。
なお、客席内での飲食、撮影・録音・録画は禁止。携帯電話・アラーム付き時計など、音の出る電子機器の電源は切っておきましょう。補聴器をお使いの方は、開演前に正しく装着されているか確認することをおすすめします。他にも分からないことや鑑賞中に困ったことがあれば、案内スタッフに相談してみると良いでしょう。
マナーと言えば、「オペラ公演にどんな服を着ていけばいいか分からない」と悩む方も多いのではないでしょうか。海外の歌劇場だとイブニングドレスやタキシードというエレガントな盛装姿をよく見かけますが、現代の日本で上演される一般的な公演にはドレスコードはなく、気構えずラフすぎない清潔な服装であれば問題ありません。もちろん、オペラ公演という日常とは異なる空間の雰囲気を楽しむオシャレをしても大丈夫ですが、オペラは上演時間が長い演目も多いので、体が締め付けられて疲れやすい服装は避けた方が無難です。なお、周囲の方への配慮のため、帽子は上演中には脱いで、香りの強すぎる香水は避けた方がよいでしょう。
快適にお過ごしいただくために/チケット購入方法
オペラ公演当日に最低限必要なものはチケットですが、会場内の空調の寒暖の感じ方には個人差があるので、ショールやカーディガンなど軽く羽織って体温調整を行えるアイテムや、咳やくしゃみが出てしまう時に口元を押さえられるハンカチもあると便利。他にも、先ほどおすすめしたオペラグラスや、公演前後に購入したグッズを入れるエコバッグなど、必要に応じて持参しましょう。
チケットは、おもに各プレイガイドや公演会場のチケットカウンターなどで販売されます。販売方法は公演によって異なるので、詳しくは主催者のホームページをご覧ください。Bunkamura主催公演では、オンラインチケットMY Bunkamuraをはじめ、Bunkamuraチケットセンター(電話)・東急シアターオーブ/Bunkamuraチケットカウンター(店頭)または各プレイガイドでのご購入、ご予約が可能です(詳細はBunkamuraチケットガイドでご確認ください。)。公演によっては学生向けのシートや料金を用意しているものもございますので、こちらも公演のホームページでご確認ください。また、残席状況によっては会場で当日券が販売される場合があるので、事前販売でチケットが完売になってもあきらめず公演のホームページをこまめにチェックしてみてください。
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