感動が生まれる場所~劇場紹介その⑥ THEATER MILANO-Za
Bunkamuraの主催企画を開催する劇場やホールをご紹介するレポート。「一度は生で音楽や演劇を鑑賞してみたい」と思っている方が気軽に足を運ぶきっかけになるよう、またすでに何度も足を運んでいる方も「このホールはこうなっていたのか!」と新たな発見を得られるよう、様々な角度から劇場・ホールの特徴に迫ります。 第6回は、2023年4月に東京・新宿歌舞伎町にオープンした超高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」6階にある劇場「THEATER MILANO-Za」です。
“大衆娯楽文化の発信地” の
歴史とDNAを継承し
多彩なライブエンターテインメントを発信
2014年に閉館した映画館「新宿ミラノ座」の跡地に、「“好きを極める場”の創出」をコンセプトに掲げて誕生した東急歌舞伎町タワー。ホテル、映画館、ライブホール、ナイトエンターテインメント施設などを併設し、新たなエンタメスポットとして注目を集めています。その賑わいの1つを成しているのが、新宿ミラノ座の名を受け継ぐライブエンターテインメントシアター「THEATER MILANO-Za」です。
かつて歌舞伎町には新宿ミラノ座の他にも、新宿コマ劇場やシアターアプルなど劇場がたくさんあり、大衆娯楽文化が栄えた地でもありました。その歴史とDNAを受け継ぐべく、THEATER MILANO-Zaではストレートプレイ、ミュージカル、2.5次元系といった幅広い演劇をはじめ、地下にあるライブホール「Zepp Shinjuku(TOKYO)」と差別化した着席スタイルの音楽ライブや映像イベントなどジャンルの垣根を超えて発信。2023年5月のこけら落とし公演を『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』が飾ったのも、新宿ミラノ座が『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』の当時の上映館でもあり、関連イベントが数多く開催され、ファンから親しまれていたという歴史があったからこそです。こうした多彩なラインナップを可能としているのが、レイアウトの可変性に優れた舞台や客席の機構です。1階の座席は1席ずつ取り外すことができるため、演劇でステージの奥行きが足りない場合は張り出し舞台(客席側に舞台が突き出た状態)にしたり、逆にステージの奥行きを必要としない音楽ライブでは舞台前部を開放して最大1088席まで増席することも可能。また、客席の壁にはフルカラー対応のLED照明を設置し、演目ごとにライティングを変えて世界観を演出。さらに、客席3階から舞台までの宙吊りや、大量の水を使った演出なども可能なのです。
THEATER MILANO-Zaでは劇場内の照明設備を、舞台上だけでなく客席にも導入。側壁と2・3階席の手すり部分に設置されたライン状のフルカラーLED照明は、公演のイメージに合わせて光の色や動きを自由に調整することが可能です。さらにこれらの光は天井にも届き、色彩によるダイナミックな演出効果をもたらします。
アーティストの鼓動や息遣いを
感じられる
一体感のあるライブ空間
THEATER MILANO-Zaは座席数が全907席(基本構成)という中規模劇場ですが、どの席に座ってもアーティストの仕草や表情を感じ取りやすく、観客がステージとの一体感を感じやすい空間になっています。その大きな要因は、舞台から1階席最後方までの距離がわずか18.9mというコンパクトな設計(ちなみに同規模の公共ホールでは30m離れていることも)。さらに2階席も1階席上空にせり出しているため、見晴らしの良さと相まって実際の距離以上に舞台が近く感じられます。また、客席からの見やすさも特筆すべきポイントです。段差が緩やかな1階席は、中央ブロックが前方の視線をさえぎられないよう座席を互い違いに配した千鳥状で、最前列の端に座ってもステージが見切れないようサイドブロックの席数は抑えめ。舞台までの体感距離が近い2階席は、斜め上からステージ全体を臨場感たっぷりに俯瞰でき、3階席も前方の視線がさえぎられないよう段差が大きくなっています。2階と3階のバルコニー席は、プライベート感が感じられるのも特長です。
スマートなデザインで
統一されたホワイエが
訪れる人々を非日常空間へと誘う
公演当日のTHEATER MILANO-Zaは多くのお客様で賑わっているため、つい見過ごしてしまいがちですが、「都市の中の広場」と「抑えきれない衝動」をテーマにデザインされたホワイエ空間も要注目! 壁にはLED照明を仕込んだアルミパイプが並び、演目に合わせてさまざまな色調に変化させ、お客様を公演の世界観へと誘います。公演内容に関連する映像を映すデジタルサイネージを設けたエリアは、フォトスポットとしても人気です。
また、6階の入口ロビーや中央ホワイエの壁には、アーティスト・ユニット“SIDE CORE”がキュレーションした鹿児島・しょうぶ学園の作家23人のアート作品を展示。さらに、床タイルに削り出された巨大な手・足跡・鍵などの絵柄がストリート感を醸し出し、ホワイエ梁上にはそれらを覗き込んでいる金色のネズミの彫刻も! ストーリー性と遊び心のあふれる仕掛けに思わず胸が躍ります。
公演の観劇前や休憩中に立ち寄りたいのが、大きな窓から西新宿の絶景を眺望できるカフェ&バー「Za Bar」。軽飲食や劇場オリジナルカバー付きのペットボトル飲料のほか、シーズナルで変わるオリジナルドリンクや公演によってはコラボドリンクを販売することもあります。演目の世界観にいっそう浸かることができ、鑑賞の思い出にもなって楽しさ倍増! こうしたコラボ企画はTHEATER MILANO-Za内にとどまらず、飲食店での料理、ナイトエンターテインメント施設でのイベント、映画館でのライブビューイングなど、東急歌舞伎町タワーの全館規模で行われることも。劇場の公演をきっかけにタワー全体でイベントを楽しめば、自分にとっての“好き”をとことん深掘りしたり、新たな“好き”を発見できそうですね。
歌舞伎町での
歌舞伎公演がついに実現!
“親密な空間” で
演目の世界観に
どっぷり浸かろう
今後のBunkamura主催企画のラインナップとして、異才・三浦大輔の3年ぶりの演出作となる舞台『ハザカイキ』や、THEATER MILANO-Za初の歌舞伎公演となる『歌舞伎町大歌舞伎』が控えています。施設の運営・管理を務める株式会社TSTエンタテイメントの松井司さんは、これらの公演の注目ポイントについて次のように語っています。
「コンパクトに設計されたTHEATER MILANO-Zaは、客席とステージが一体になりやすい空間です。演目のジャンルはそれぞれ異なりますが、演者の皆さん一人ひとりの迫力や“抑えきれない衝動”を感じながら、親密な空間ならではの鑑賞体験をお楽しみください。また、歌舞伎町の地名の由来となった歌舞伎の公演が満を持して実現し、当日どんなライブ空間が生まれるか個人的に楽しみですし、東急歌舞伎町タワーを含めて街全体で公演を盛り上げていきたいと思っています」
これからもジャンルレスなライブエンターテインメントの発信地としてさまざまな展開を計画しているTHEATER MILANO-Za。好きな演目に足を運んでその世界観にどっぷり浸かり、他の会場では得られないアーティストとの一体感を楽しんでみてはいかがでしょうか。
文:上村真徹
〈公演情報〉
Bunkamura Production 2024
『ハザカイキ』
公演日:2024/3/31(日)~4/22(月)
『歌舞伎町大歌舞伎』
公演日:2024/5/3(金・祝)~5/26(日)
COCOON PRODUCTION 2024
『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』
公演日:2024/7/9(火)~8/4(日)