一度聴くと耳に残る名曲の宝庫!モーツァルトのオペラの魅力とは
交響曲から室内楽まで幅広いジャンルで名作を数多く残し、クラシック音楽の作曲家の中でも特に高い人気を誇るモーツァルト。しかし彼の「オペラ」に触れたことのない人は、意外と多いようです。そこで今回は、2024年2月21日~25日にめぐろパーシモンホールで開催する『魔笛』上演の前に、初心者でも楽しめるモーツァルトのオペラの魅力を紐解いていきましょう。
オペラの誕生から
モーツァルトの登場まで
オペラとは、音楽と歌(時にセリフ)による表現でストーリーが進行する舞台芸術です。そこにはドラマと音楽の融合があり、舞台美術や衣裳という視覚的な要素も加わるため、“総合芸術”とも呼ばれています。19世紀初頭ぐらいまで、オペラの種類は主に、古代の神話や歴史上の人物を題材としたシリアスな内容の「オペラ・セリア」、単純明快で喜劇的な内容の「オペラ・ブッファ」、レチタティーヴォ(状況説明や会話を歌で行う「朗唱」)の代わりにドイツ語の台詞で進行する「ジングシュピール(ドイツ語で「歌芝居」)」に分けられます。
オペラは16世紀末にイタリアで誕生しましたが、当初は貴族のための娯楽として宮廷の祝祭などで催されることが多く、そのため高尚なストーリーを特色とするオペラ・セリアが中心でした。しかし、貴族階級の没落と市民階級の台頭という社会の変化に呼応する形で、より庶民的で身近なテーマを扱うオペラ・ブッファやジングシュピールが大衆の娯楽として花開き、オペラ・セリアをしのぐ人気を獲得していきました。そんな時代の変化を背景に、モーツァルトはオペラの名作を次々と生み出したのです。
モーツァルトのアリアと
アンサンブルは名曲揃い!
モーツァルトは全部で21作品のオペラを手がけ、先ほど挙げたオペラ・セリア、オペラ・ブッファ、ジングシュピールのいずれも作品を残しています。なかでも代表的なのは、モーツァルトの明るく華やかな音楽とマッチしたオペラ・ブッファに分類される『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファントゥッテ』。さらに、この3作品にジングシュピールの『魔笛』『後宮からの逃走』を加えた合計5作品が“モーツァルトの5大オペラ”と呼ばれ、高く評価されています。
モーツァルトのオペラの魅力は何と言っても、彼のメロディメーカーとしての本質をいかんなく発揮した美しい旋律にあります。ソロ歌手が登場人物の心情を朗々と歌い上げるアリア(独唱)は大きな聴きどころで、オペラの公演だけでなくガラ・コンサートでも頻繁に歌われています。例えば、『フィガロの結婚』で美少年ケルビーノが恋する気持ちを訴えかける「恋とはどんなものかしら」、夜の女王がソプラノの最高音で復讐心を歌い上げる『魔笛』の「夜の女王のアリア」などは誰でも一度は聴いたことがあるでしょう。
また、複数のソロ歌手がまるでリレーするように台詞=歌詞を掛け合う絶妙なアンサンブル(重唱)も、モーツァルトのオペラの大きな魅力です。「パパパ…」の掛け合いが愉快な『魔笛』の「パパゲーノとパパゲーナの二重唱」は特に有名で、昔、某アイスクリームのCMで歌われていたのを覚えている方も少なくないのでは?
オペラを総合芸術の域へと
高めたモーツァルト
このようにモーツァルトのオペラは曲を聴くだけでも十分楽しめますが、その真骨頂は歌劇としての完成度の高さにあります。登場人物の個性や性格を言葉で長々と説明するのではなく、音楽によって雄弁かつ情感豊かに演出。そして、主役から脇役に至るまで人間味にあふれるキャラクターたちが登場し、美しい歌に乗せて豊かな感情の起伏を聴かせる──。つまり、音楽と劇の一体化を高いレベルで実現したモーツァルトこそ、オペラを真の意味で総合芸術へと高めた作曲家と言えます。だからこそ彼の作品は当時の大衆から絶大な支持を集め、今もなお世界中で上演されているのです。
Bunkamuraを飛び出して様々な個性を持つ外部ホールで上演するORCHARD PRODUCEでは、オペラ企画の第1弾として『魔笛』を皮切りにモーツァルトのオペラシリーズをスタートします。演目ごとに気鋭の美術家とのコラボレーションを行う本シリーズを通じて、総合芸術としてのモーツァルトのオペラの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
文:上村真徹
〈公演情報〉
Bunkamura35周年記念公演
ORCHARD PRODUCE 2024
鈴木優人&バッハ・コレギウム・ジャパン×千住博
モーツァルト:オペラ≪魔笛≫(新制作・全幕上演)
2024/2/21(水)18:00開演
2024/2/22(木)14:00開演
2024/2/24(土)14:00開演
2024/2/25(日)14:00開演
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
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