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感動が生まれる場所~劇場紹介その③ 横浜みなとみらいホール

Bunkamuraの主催企画を開催する劇場やホールをご紹介するレポート。「一度は生で音楽や演劇を鑑賞してみたい」と思っている方が気軽に足を運ぶきっかけになるよう、またすでに何度も足を運んでいる方も「このホールはこうなっていたのか!」と新たな発見を得られるよう、様々な角度から劇場・ホールの特徴に迫ります。 第3回は、海に面したみなとみらい21地区にある本格的クラシックコンサートホールで、2023年10月からオーチャードホールと共に『N響オーチャード定期2023/2024 東横シリーズ 渋谷⇔横浜<ブラームス・チクルス>』を開催している横浜みなとみらいホールです。

どこに座っても豊かな音を味わえる
囲み型シューボックス形式ホール

横浜みなとみらいホールは、ベイエリアの観光地として人気が高いみなとみらい21地区に建つクラシック専門ホールです。「ときめく音楽を 海の見えるホールから」をコンセプトに、市民が音楽を身近に感じ、親しむ機会をつくる場所として1998年に誕生。大型パイプオルガンを設置した大ホール(2020席)と、室内楽の演奏会に適した小ホール(440席)で多彩なコンサートを実施し、熱心な音楽ファンのみならず、地域に密着した市民に愛されるホールとして2023年で開館25周年を迎えました。
今回、『N響オーチャード定期2023/2024 東横シリーズ 渋谷⇔横浜<ブラームス・チクルス>』を開催する大ホールの構造は、オーチャードホールと同じくクラシックコンサートに適したシューボックス型がベース。直方体の構造によって側壁からの反射音が広く拡散し、残響がありながらも“まろやか”で低音の利いた響きがホール全体に伝わるため、音楽ファンはもちろん舞台に立つ国内外の演奏家からも高く評価されています。
大ホールの大きな特徴としてもう一つ、アリーナ型の客席配置を取り入れた「囲み型シューボックス形式」となっていることも挙げられます。舞台を見下ろす左右のバルコニー席からは演奏の様子が間近に見やすく、また舞台後方席からだと指揮者を正面から見ることができ、なおかつオーケストラの演奏ではトロンボーンなど金管楽器の音がより力強く響いてきます。また、舞台最前部から3階席最後部までわずか33.5mと、ホール全体が演奏者を間近に感じられる一体的な構造となっているのも特徴的。つまり、各エリアによって異なる鑑賞体験を得ることができる一方、どの席に座っても良質な音響と臨場感のある演奏を楽しむことができるのです。

2階後方席から見た大ホールの全景。全2020席という収容規模でありながら、2階や3階からでも舞台との距離が比較的近く感じられる、一体的な構造となっています。舞台に立つ演奏者からも観客の表情が見えやすいそうです。 Ⓒ平舘 平

一度は体験したい!
響きも装飾も美しい
パイプオルガン「ルーシー」

横浜みなとみらいホールのシンボルとしてひときわ存在感を放っているのが、「ルーシー」の愛称で親しまれている大ホールの大型パイプオルガン。大ホールはオルガンを響かせることを考慮して設計し、また木製のオルガンケースには横浜にちなんだカモメの彫刻などが施され、音の響きも見た目も美しいのが魅力です。通常のコンサートの他にも、平日昼の30分間、100円または1ドルで気軽に体験できる「オルガン・1ドルコンサート」(全席自由・事前予約不要)や、全席指定1000円で1時間プログラムを鑑賞できる「オルガン・1アワーコンサート」を年に数回お届けしています。ちなみにパイプオルガンコンサートでの座席は、オルガンや演奏者を見上げることなく鑑賞できる2階・3階がオススメ!

輝くような明るい音色が魅力的なパイプオルガン。その音色にちなみ、「光」を意味するラテン語“lux”に由来する「ルーシー」の愛称で親しまれています。2021年からの大規模改修工事でオーバーホールが行われ、いっそう音色の輝きを増しました。

また、横浜みなとみらいホールでは2021年1月から2022年10月まで大規模な改修工事を行い、もう一つ新たなシンボルが大ホールのホワイエに生まれました。それは、天井からパイプオルガンがぶら下がっているように設置されたモニュメント。モニュメントのライトが点灯して様々な色彩に変化し、施設の中からはもちろん外からもその美しさに見入ってしまいます。
大規模改修工事による大きな変化はモニュメントだけではありません。ホールのカーペットが高級感と暖かみのある赤色に変わり、クラシックコンサートというハレの場にふさわしい華やいだ雰囲気を醸し出しています。また見た目だけでなく、スロープの増設や多機能トイレの設置などバリアフリー対応も強化し、誰もが快適にコンサートを楽しみやすいホールへと進化しました。

リニューアル工事に合わせて館内のカーペットを高級な質感に一新し、ホワイエにはパイプオルガンのようなモニュメントを新たに設置。このモニュメントにライトをあてる設備が備わっていて、青や緑など様々な色彩に変化するようプログラムされています。 横浜みなとみらいホールでは開演前の合図として銅鑼(どら)の音が流れます。横浜にゆかりの深い帆船日本丸で実際に使われていた銅鑼で、現在の音は録音によるものですが、1998年の開館当初はホールの職員が実際に叩いて鳴らしていて、当時の銅鑼のレプリカがホワイエに吊るされています。

海の見えるホールへ
“小旅行”を楽しむ気分で
出かけよう

さらに横浜みなとみらいホールの大きな魅力は、ベイサイドエリアという抜群の立地にもあります。全面ガラス張りの開放感たっぷりのホワイエで、公演前や休憩時間にスパークリングワインのグラスを傾けながら遠く海を眺めるというのは、他のコンサートホールではなかなか体験できません。そんなホワイエでの過ごし方について、今回取材でお話を伺った新井鷗子館長も「東京在住のお客様にとって、横浜はちょっとした小旅行のようなもの。旅行先ならではの解放的な気分を味わい、ホワイエのカウンターで隣のお客様と公演の感想を交わし合っていただきたいなと思います」と語っています。
また新井館長からは、現在開催中の『N響オーチャード定期2023/2024 東横シリーズ 渋谷⇔横浜<ブラームス・チクルス>』についても次のようなメッセージをいただきました。
「同じ東横線に立地するオーチャードホールと交互に公演を行うことは以前からの念願であり、『東横シリーズ』として定期的に開催できるのは夢が叶った気持ちです。横浜は東京から少し遠いので、普段オーチャードホールに足を運ぶお客様がわざわざ出かけようと思えるようなコンサートを企画しました。ブラームスの交響曲だけでなくベートーヴェンのピアノ協奏曲なども交え、クラシック音楽ファン以外も楽しめるエンタメ性の高い名曲プログラムとなっています。渋谷と横浜の名物お菓子を会場ロビーで販売する“本日のおやつ”もそうした試みの一つです。ぜひ、みなとみらいや周囲の繁華街と合わせて、小旅行を楽しむ気分で足を運んでください」
クラシック専門ホールならではの良質な音の響きと、楽しい観光スポットが集まった横浜港町への日帰り旅行をセットで体験できる、とびきりの非日常を楽しんでみませんか。

横浜みなとみらいホールは商業施設が集まったベイサイドに立地し、館内から昼は遠くに海が、夜はライトアップされた景色が見えます。少し足を延ばせば横浜中華街も巡ることができるので、コンサート鑑賞と観光をセットで楽しむのもおすすめです。

文:上村真徹

〈公演情報〉
N響オーチャード定期2023/2024
東横シリーズ 渋谷⇔横浜
<ブラームス・チクルス>
Supported by IHI

第125回 2023/10/28(土)15:30開演 会場:横浜みなとみらいホール
第126回 2024/1/8(月・祝)15:30開演 会場:Bunkamuraオーチャードホール
第127回 2024/3/2(土)15:30開演 会場:横浜みなとみらいホール
第128回 2024/4/29(月・祝)15:30開演 会場:Bunkamuraオーチャードホール
第129回 2024/7/6(土)15:30開演 会場:横浜みなとみらいホール

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