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Bunka Baton 芋生 悠(俳優)

“文化の継承者”として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術に掛ける情熱や未来について語る「Bunka Baton」。今回は、COCOON PRODUCTION 2023『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』に出演された芋生悠さんです。


“表現”することを生み出した意外な2つの原点

“人間の色気”をまとうような強い存在感を持ちつつ、演じる役によってガラリと雰囲気を変化させられる期待の若手俳優。そんな芋生さんが人生で最初に“表現”の扉を開けた出来事を聞くと、「空手」と「絵」、意外な二つの答えが返ってきました。
「中学生の時、美術の授業で自画像を描く課題があり、そこから絵にハマって高校も美術コースを選びました。それとは別に、空手も10年続けていたんです。1対1で対戦する《組手》だけではなく、演舞の美しさを見せる《形(かた)》もやっていて。これは四方八方に敵がいることを想定しながら技を見せていく、いわばボディランゲージですよね。表現と言っていいかわかりませんが、今思えば演技と通じるものを感じます」と振り返ります。

なんでものめり込む!お芝居の面白さを知った毎日20本のDVD

2014年、自分を表現できる場を求めて受けた「JUNON Girls Contest」でファイナリストに。18歳で熊本から上京してからは、オーディションの日々が始まりました。生まれ育った地元には映画館がなく、“演技”に触れる機会がなかった芋生さんは、「まずは勉強」と一念発起、毎日20本のDVDを観続けたとか!
「映画を観るお金もないですし、部屋にはテレビもない。借りてきた映画をDVDプレイヤーでひたすら流し続け、気がつくと朝を迎え……みたいな毎日でした(笑)。でもこのおかげで映画のすごさを目から吸収できましたし、お芝居の面白さを心から知ることができました」と語る口調は軽やか。そして、ド直球な頑張り方がなんだか気持ちいい。「なんでも気づいたらのめり込んじゃう節はあります。負けず嫌いだからかも」と笑う表情も、実に清々しくてステキです。

10代で親元を離れる娘さんを、ご両親はさぞや心配したのでは?と聞くと、しみじみと温かいエピソードを教えてくれました。「夢を見ること自体をすごく喜んでくれました。でも空港に見送りに来たお父さんが隠れて泣いているのを見て……なんだか私、笑っちゃって(笑)。父は上京時に手紙もくれて、そこには『咲くべきときに咲く花になれ』と書いてあったんです。迷った時にいつも見直しますし、これを読めば『大丈夫』と思える大事な手紙。母親は道しるべのような、一番憧れている女性ですね。両親は私にとって、とても大きい存在なんです」。

自身の血となり肉となる演技の魅力

芋生さんにとって演技の魅力は「全く違う人生なのに、だんだんと自分の一部になっていくところ」とか。「何かの役を演じると『そういう人生を生きた』感覚が強く身体に残って、架空の物語なのに架空の物語じゃない、自分の血や肉になっていく感じがあるんです」という言葉からは、彼女が心も身体も丸ごと全部で演じていることがヒシヒシと伝わってきます。ちょうど取材の前日が舞台『ガラパコスパコス』稽古初日だったこともあり、「愉快な人たちがたくさん出てきますし(笑)、どの人物も人間くさくて魅力的。稽古も本番も、全てがすごく楽しみです」と、好奇心に輝く目も印象的でした。

最後に「未来のビジョン」を尋ねると「今、私の中で『勉強したい』気持ちがますます強まっていて、あらゆることから吸収したい時期なんです。そのためには考え方も生き方も鈍感にならず、自由で柔軟でありたいと思っています。小さなことにきちんと感動し、すべてのことに感情を動かせる人間になりたい」という、真っ直ぐな言葉が返ってきました。

しなやかで弾力ある心を持ち、感受性豊か。彼女が演じる役に強さと脈動が感じられる理由が、少し見えた気がしました。

文:川添史子

〈プロフィール〉

1997年12月18日、熊本県生まれ。2014年JUNON Girls Contest ファイナリストをきっかけに、15年春にFM802キャンペーンソングのMVでデビュー。16年『マスタードガス・バタフライ』で映画初主演、2020年公開の主演映画『ソワレ』で新人賞にノミネートされ、22年『あなたはだんだん欲しくなる』(BS-TBS)でドラマ初主演を務める。その他、映画『37 セカンズ』『ひらいて』、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』、舞台『広島ジャンゴ2022』など、ドラマ、映画、舞台、CM と幅広く活躍。2023年は 10 月 27 日より映画『こいびとのみつけかた』が公開予定。

Instagram @imouharuka

〈公演情報〉※終了しました
COCOON PRODUCTION 2023
『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』
公演日:2023/9/10(日)~24(日)
会場:世田谷パブリックシアター

「Bunka Baton」では、“文化の継承者”として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術に掛ける情熱や未来について語っていただきます。ぜひご覧ください。

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