見出し画像

バレエが好き、その思いだけで続けてこられた/岩井優花さんインタビュー

“文化の継承者” として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術に掛ける情熱や未来について語る「Bunka Baton」。昨年プリンシパル・ソリストに昇格した、Kバレエ トウキョウにて活躍中のバレエダンサー、岩井優花さんの登場です。


バレエ以外の人生は
考えられなかった

小さい頃から体を動かしたり踊ったりするのが好きで、3歳で『白鳥の湖』公演を鑑賞し、まだその記憶が残っているという岩井さん。鑑賞後、「私がやりたかったのはこれなの」とお母様にお願いし、バレエ教室に4歳から通い始めます。小学校の中学年頃にはもうプロとしてやっていくことを考え始めたそうです。「他の道に進んで人生を歩むというイメージがわかなかったし、バレエでプロになる以外考えられなかったです」と、レッスン日以外もほぼ毎日自主練習に励む日々を送りました。コンクールでは『ドン・キホーテ』のキトリ、『ダイアナとアクティオン』のダイアナ、『パキータ』のエトワール、『白鳥の湖』の黒鳥などを踊っており「お姫様は踊ったことがないんです。昔はパキパキ系でしたね(笑)」とのこと。現在の柔らかく優しい雰囲気からは想像できないですね。

現代社会にコミットする世界初演の作品を上演するKバレエ トウキョウ内のプロジェクト、K-BALLET Opto にも岩井さんは出演されています。こちらの舞台では岩井さんの新たな一面を観ることができます。

ジョフリー・バレエ団の
スクールへ留学、
入団7年後、帰国しKバレエヘ

2014年、スカラーシップを得てジョフリー・アカデミー・オブ・ダンスのトレーニー・プログラムで学び、2015年にスタジオ・カンパニーに所属します。シカゴにあるジョフリー・バレエ団は、レパートリーの半分は古典、それ以外はネオクラシックやコンテンポラリー作品を上演しています。岩井さんはそれまでコンテンポラリーは講習会でのワークショップの中で少し踊る、という程度だったのでジョフリーでしっかり学ぶことになりました。スクール3年目の時点、2017年にカンパニーのディレクターがスクールのクラスレッスンなどで岩井さんを見て評価し、ジョフリー・バレエ団に入団が決まります。
ジョフリー・バレエ団にはダンサーの階級がなく、入って1年くらいでソロ、『白鳥の湖』だったらパ・ド・トロワなどたくさんの役を踊る機会に恵まれ、コール・ドもソロも両方踊る、ということで大変だけれども楽しく充実した日々を過ごされていました。ところが、コロナでカンパニーが全く稼働しなくなってしまいます。いつか日本で踊りたいという思いもありましたが、いつになるのか自分でもはっきりとはわからずにいた岩井さんは、いま日本に戻って日本のカンパニーで踊るという選択もあるのでは、と思うようになります。そして日本のトップのバレエ団で踊りたいという思いがあり、冬休みにKバレエのオーディションを受けます。こうして2021年4月にKバレエ カンパニー(現Kバレエ トウキョウ)にソリストとして入団することになりました。

プリンシパル・ソリストに昇格
観に来てくださる方の心を
動かすように踊りたい

岩井さんは、2023年11月26日のマリー役を踊った『くるみ割り人形』公演の終演後にプリンシパル・ソリストへの昇格を熊川芸術監督から告げられます。「全く想像していなかったことなのでびっくりという気持ちの方が大きかったです。しばらくぼーっとしてしまい状況が飲み込めず、感動を噛みしめる余裕がありませんでした」。
「『バレエが好き』この気持ちはバレエを始めた時から変わらず、この気持ちだけでこれまで続けてこられました。Kバレエのみなさんは意識が高くて良い意味で緊張感があり、日々刺激を受けています。この環境でこれからも精進することに変わりはないですが、プリンシパル・ソリストとしてより一層、責任感を持ち一所懸命練習に励まなければという気持ちでいます」
なにか舞台に上がる前に験担ぎのようなことはされていますか、とお尋ねすると「本番前に思うことはいつも決まっているんです。踊れることに感謝する気持ちを思い出してから舞台に上がるようにしています。どうしても根がネガティブなもので『こういうことをしたからうまく踊れたのかも』などと考えがちなんです。だからおまじないやジンクスには頼らないようにしています」と答えてくださいました。テクニックだけでなく、強いマインドもセルフコントロールできる、心身ともにトップダンサーであることがうかがえます。
最後に「いつも観に来てくださる方の心を動かす踊りをしたいですし、来てくださった方が少しでも私の踊りで感動してくださったらいいなと思っています」と力強く語ってくださいました。
これから舞台のセンターに立ち、自信に満ち、光り輝く岩井さんを観る機会がますます増えることでしょう。

文:結城美穂子

〈プロフィール〉

岩手県生まれ。4歳よりバレエを始める。
2014年よりジョフリー・バレエ トレイニープログラムに所属。2015年同校スタジオカンパニー入団。2016年ユース・アメリカ・グランプリNYファイナルTOP12。2017年ジョフリー・バレエ入団。主なレパートリーは、『くるみ割り人形』のマリー、『白鳥の湖』のパ・ド・トロワ/2羽の白鳥/パ・ド・カトル、『ジゼル』のモイナなど。
2021年4月Kバレエ カンパニーにソリストとして入団。2022年9月ファースト・ソリスト、2023年11月プリンシパル・ソリストに昇格。
主な出演作は、熊川版『ロミオとジュリエット』のジュリエット/ジュリエットの友人、『くるみ割り人形』のマリー姫/雪の女王/花のワルツのソリスト/アラビア人形、『白鳥の湖』のパ・ド・トロワ/2羽の白鳥/6人の姫『ドン・キホーテ』の花売り娘/森の女王、『シンデレラ』のトンボ、新制作『眠れる森の美女』のオーロラ姫/リラの精/フロリナ王女、熊川振付『カルメン』のミカエラ/メルセデス、『クラリモンド~死霊の恋~』全編の娼婦、『クレオパトラ』のオクタヴィア/クレオパトラのお付き、『蝶々夫人』タイトルロール/ケイトの友人、M.ワレルスキー振付『プティ・セレモニー/小さな儀式』など。

Instagram @yukaaa_____

〈公演情報〉
Orchardシリーズ
K-BALLET Opto『シンデレラの家』
In association with PwC Japanグループ

2024/4/27(土)15:30開演
2024/4/28(日)12:30開演/17:00開演
2024/4/29(月・祝)12:30開演/17:00開演

「Bunka Baton」では、“文化の継承者”として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術に掛ける情熱や未来について語っていただきます。ぜひご覧ください。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!