見出し画像

衝撃のデビューから5年…天才ヴァイオリン少女の現在地/村田夏帆さんインタビュー

“文化の継承者”として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術に掛ける情熱や未来について語る「Bunka Baton」。今回は、世界的に注目を浴びる16歳のヴァイオリニスト、村田夏帆さんをクローズアップします。


11歳でオーケストラと共演してデビューした天才少女

とても16歳の少女が弾いているとは思えないほど、深い情緖をたたえた演奏で聴衆を魅了するヴァイオリニストの村田夏帆さん。それもそのはず、3歳でヴァイオリンを始め、11歳のときには東京交響楽団と共演したという驚くべき才能の持ち主です。2022年にはスイスで開催されたティボール・ジュニア国際ヴァイオリンコンクールに最年少出場して第1位に輝き、世界の音楽界からも熱い注目を浴びています。
そんな村田さんがヴァイオリンを始めたきっかけは、「神尾真由子先生がチャイコフスキー国際コンクールで優勝したときのドキュメンタリー番組の録画を何度も繰り返し観て、私もあんなふうにきれいなドレスを着てヴァイオリンを弾いてみたいと思った」とのこと。
現在、 東京音楽大学付属高等学校器楽専攻(ヴァイオリン)1年に特別特待奨学生として在学中の村田さんは、幼い頃の憧れだった神尾真由子さんに師事しています。「神尾先生に習い始めてから1年ほどですが、先生はすごく音が大きくて、姿勢からして違うのがわかります。オーケストラと共演するときは、大きな音でフォルティッシモを弾かなければ埋もれてしまうので、私も今、大きな音の出し方を先生に教えていただいているところです」と語り、「神尾先生は意外と優しいです」と笑顔で付け足してくれました。
神尾さんのほかに、東京クヮルテットでの活動でも知られる原田幸一郎さん、世界的ヴァイオリニストを数多く育てた名伯楽ザハール・ブロンさんにも師事している村田さん。「原田先生は、細かくご注意をいただくことは少ないですが、いつもとても大事なことを言ってくださいます。ブロン先生からは小学校4年生のとき、『スイスでレッスンを受けてみませんか?』とお声がけいただき、今もスイスに行ってレッスンを受けています。言葉がわからなくても、先生がたくさん弾いて教えてくださるのでわかりやすいです」とのこと。

壁を乗り越えた達成感を糧に、
たゆまぬ努力を重ねる

どんなに才能があったとしても、日々のたゆまぬ努力なしには到達できない高みに立つ村田さんですが、「平日は5〜6時間、休日は7〜8時間」の練習を、小学校4年生ぐらいからずっと続けてきたのだそう。練習がイヤになっちゃうことはないのですか? と尋ねてみると、「練習しなかったら後で後悔するから、イヤなときも練習はします」という答えとともに、「たくさん練習して、壁を乗り越えられた瞬間が好き。どんなに練習してもコンクールや本番の前は緊張しますが、終わった後の達成感があるから、また次に向かって頑張ろうと思います」と頼もしい言葉が返ってきました。
村田さんは目下、11月19日にオーチャードホールで開催されるBunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル『未来の巨匠コンサート2023』に向けて練習を積み重ねています。アンドレア・バッティストーニ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団と、シベリウスのヴァイオリン協奏曲を共演するという大舞台。「シベリウスのコンチェルトは初めて取り組みますが、第2楽章の感情を表現するのが一番難しいです。あとテクニック的には躍動的な第3楽章も大変。でもオーケストラとの共演は、自分が弾いていないときも楽しいので大好きです」と、目を輝かせて語ってくれました。
それにしても、彼女の深い音楽性はどこから生まれてくるのでしょう? テクニック的な練習のほかに、音楽作りのためにやっていることは? との質問には「楽曲に取り組むときは、たくさんの演奏家のCDを聴いたり、YouTubeで映像を観たりして、いいなと思ったところを自分でも弾いてみたり」するそうです。好きなヴァイオリニストは「リサ・バティアシュヴィリさん、ジャニーヌ・ヤンセンさん、ユリア・フィッシャーさん。あと、指揮者ではパーヴォ・ヤルヴィさんのダイナミックな音楽が好きで、いつか共演させていただくのが夢です」とのこと。
幼い頃から「天才ヴァイオリニスト」として数々の大舞台に立ってきた村田さんですが、学校生活について尋ねると、はにかんで笑いながら高校1年生らしい顔を見せてくれました。最近、楽しかったことは「体育祭。自分で好きな種目を選べるのですが、私は玉入れと、学年対抗リレー、二人三脚に出場しました。秋には文化祭もあって、私のクラスは演奏喫茶をするので楽しみです」。村田さんの演奏を聴きながらお茶が飲めるとは、なんと贅沢なカフェでしょう! 「クラスの友だちとはK-POPの話で盛り上がったりもします」と話してくれたので、好きなアーティストを尋ねると、「LE SSERAFIM。携帯の待ち受けにしてます」と小声で教えてくれました。
名ヴァイオリニスト、ピエール・アモイヤルさんは村田さんの演奏を聴いて、「もし20年後に再びあなたの音を聴いても、私はすぐにあなただとわかるでしょう」という言葉を贈りました。20年後の彼女は、どのようなヴァイオリニストになっているのでしょうか。今からとても楽しみです。

文:原典子
写真:大久保惠造

〈プロフィール〉

2007年茨城県生まれ。3歳でヴァイオリンを始める。11歳で東京交響楽団と共演し、ソリストとして初めて舞台に立つ。以後、国外多数のフェスティバルや記念コンサートに招待され、セレモニーで演奏。国内外のソロリサイタルやコンサートに出演。 これまでに川又くみこ氏、現在、原田幸一郎、ザハール・ブロン、神尾真由子の各氏に師事。2022年ティボール・ジュニア国際ヴァイオリンコンクール(スイス)第1位。併せて最年少出場、シンクロニア音楽協会特別賞受賞。 現在、東京音楽大学付属高等学校器楽専攻(ヴァイオリン)1年に特別特待奨学生として在学。
X @NatsuhoMurata

〈公演情報〉
Bunkamuraオフィシャルサプライヤースぺシャル
未来の巨匠コンサート2023
2023/11/19(日)15:00開演
会場:Bunkamuraオーチャードホール

「Bunka Baton」では、“文化の継承者”として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術に掛ける情熱や未来について語っていただきます。ぜひご覧ください。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!